ギックリ仰天
ギックリ腰になった。
部屋に掃除機をかけていて、ほんの一瞬、腰にピッと電流が走った。なんともなかったので20分歩いて町田駅に出てカフェでお茶を飲んだ。1時間ほど本を読み、帰ろうとして、立ち上がれなかった。痛い。とにかく痛い。タクシーを呼んで帰宅し、そのまま寝転がって呻いた。
3日目に冷蔵庫が空になった。拙著脚本の『わらびのこう』に、足が萎えて歩けなくなり、里へ下りて食料を得られなくなった老婆が、自らの意志で食を断ち、死んでいくというシーンがある。ぼくの場合はもう少し生きていたいし、腰の痛みよりも飢え死にするほうがきついと思ったので、痛い痛いと泣きながら食料を買いに行った。笑顔の人が行き交う街が空虚になる。この痛みって奴はいったい何なのだ。
というのが8月初旬の出来事で、痛みが緩んでいくのといっしょに夏が終わってしまいました。
みなさま、いかがお過ごしでしょうか。
お変わりありませんか。
このブログの更新をすっかりサボタージュしてしまいました。すみません。
ようやく腰が治りました。完治です。軽い軽い。立っても座っても飛び跳ねても痛くないということがなんと心地よいことか。童のようにはしゃいでおります。
阿鼻叫喚の間に、いくつかうれしい発見がありました。
そのひとつをご披露します。
なんと若山牧水の全歌集がインターネットで読めるんですね。15歌集すべてです。6896首です(重複したものを除く)。仰天しました。驚喜しました。
さっそくダウンロードし「紙」にファイルしました。財宝の山を手にした気分です。「はつとして」で検索すると──
はつとして歩みをとどめなにやらむ払ふがごとく癖ぞ袖振る 『芸術か死か』
はつとしてわれに返れば満目の冬草山をわが歩み居り 『路上』
はつとしてこころ変れば蒼暗くそこひも見えず降るそらの雪 『路上』
と、たちどころに出てきます。
「山」や「海」で検索するともうたいへんです。
こんな幸せがあってよいものだろうか。身体は痛いが心は嬉し、の夏でありました。
大正7年の秋、牧水は利根川の上流を遡りたいと思い立ちます。
ところが金がない。おまけに風邪をひく。スペイン風邪が世界を震撼させた年でした。
書きためた文章を出版社に持ちこんで前借りをして、汽車に飛び乗ったのが11月12日。しかし雪のために利根川を遡ることを断念。20日、中之条から乗り合い馬車で六里ヶ原へ向かいます。その途中、牧水ははじめて吾妻渓谷を目にすることになります。その感動を書いた『吾妻の渓より六里が原へ』はぼくがもっとも好きな紀行文です。
昨年7月と10月、吾妻渓谷へ行きました。川原湯温泉の牧水が泊まった養壽館はなくなっていたけれど隣の山木館に泊まりました。
牧水と同じ11月20日、吾妻渓谷に立ってみたいなあ。行けるかなあ……。
おのが身のさびしきことの思はれて滝あふぎつつ去りがたきかも 牧水
◎J-TEXTS日本文学電子図書館 http://j-texts.com/
◎紙 http://rakusai.org/
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コメント
渡辺監督。お久しぶりです~。
えぇ~、ぎっくり腰ですか!
それは大変でしたね。
その間は新作の執筆はおあずけ状態だったんですか?
監督の事なので「イタタ・・」とか言いながらデスクに齧り付いてたりして・・あは。
今は完治したそうですが、あまり無理しないで下さいネ。
・・と言いつつ新作にとても興味津々だったりして・・うふふ。
新作楽しみにしています。
絶対見に行きます!
そうそう、監督が丁度ぎっくり腰でダウンしてた頃メールを送ったんですが届いてますか?
・・届いてなかったりして・・。
届いてたら読んで下さいネ。
それでは。
投稿: ぽんた | 2006年10月 3日 (火) 13時38分
○ぽんたさん、ご無沙汰しました。
新作は、鈍牛のごとき歩みですが進めております。
楽しみにしているとおっしゃっていただいて元気が出てきました。ありがとう!
メール……、届いていません!?
もしかして迷惑メールと一緒に消してしまったかもしれません。マウスが壊れていて信じられない誤作動をしていたから。
お手数かけますが、もう一度送っていただけませんか。
よろしくお願いします。
いただいたメールには遅れても必ず返信することにしています。
もし返信がなかったら、「おい、返事がないぞ」とお知らせくださいね。
投稿: 渡辺寿 | 2006年10月 3日 (火) 14時15分
渡辺監督。
今メール送っておきました♪
迷惑メールと一緒に削除って・・私だけじゃなかったんですネ。あはは・・。
監督も仲間だったなんて・・!
雲の上の存在の人が私と同じポカを・・何かホッとしてしまいました。
お返事はいつでもいいですよ。
お仕事優先して下さいネ。
それでは。
投稿: ぽんた | 2006年10月 3日 (火) 15時21分
○ぽんたさん、
メールを拝受しました。
ありがとうごさいました。
まだ雲の上におかないでください。泥濘に足をとられて地面に這いつくばっておりますよ。
投稿: 渡辺寿 | 2006年10月 3日 (火) 16時29分