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2006年4月10日 (月)

心霊写真ではありません。

Breathlesstsutsui002s  写真をご覧ください。
 筒井くんの左肩に乗っかっている顔は、背後霊ではありません。助監督です。
 場所は中杉通り、地下鉄南阿佐ヶ谷駅の近くです。街の自然な人の流れに筒井くんが溶け込めるよう、この助監督は、通行中の人々に協力をお願いするために立っているのです。このキャメラには写っていますが、映画のキャメラのフレームからは外れたところにいるのです。

 監督にとって助監督はなくてはならない存在です。彼らがいてくれないことには手足をもぎとられたも同然になってしまいます。特にぼくの場合は。
 通常、助監督は3~4人います。それぞれ異なる役割を持っています。撮影スケジュール、出演者の衣裳チェック、持ち道具のチェックなどなど数え切れない重要な仕事を彼らはこなします。
 なかでも彼らはムードメーカーでなければなりません。なにせ大勢スタッフがいるのに、つぎにどんなカット(映像)を撮りたいのか、知っているのは監督だけなのですから、いや下手をすると監督ですら、どんなカットにすればいいのか迷っていたりするのですから、監督の意向を素早く察知し、大勢のスタッフとキャストをすんなりとその方向へ向かわせるのは彼らに負うところ大なのであります。

 もうひとつ彼らの大きな役割として、エキストラの演出があります。ぼくの場合、エキストラの配置や動きはほとんど助監督に任せています。もちろん任せるに足る能力を持っていてくれなければ困るわけです。
 さてこの写真の筒井くん、自転車をおいて駆け出す一瞬です。
 このあと電車に飛び乗って恵美子(清水美那)さんを口説きはじめます。恵美子さんは座席を移動して避けようとしますが、徹(筒井)はしつこくついて行きます。
 このシーン、電車を2両借り切って撮影しました。乗客はエキストラです。この乗客の配置がじつにすばらしい。これは助監督の力です。
 エキストラをいっぱい詰め込んで満員の状況を作るのはむしろ簡単です。空席の多い状態で、以下に効果的に乗客を配置するか、逃げる恵美子、追う徹とどうかみ合わせていくか。ぼくの要求に助監督たちは見事に応えてくれています。そしてエキストラの女性も控えめないい演技をしてくれています。そのあたりもぜひご覧になってください。

 ひとつお断りしなければなりません。
 南阿佐ヶ谷駅から乗るのですから、電車は当然丸ノ内線です。丸ノ内線電車の座席は赤色、しかし写っている電車のシートは青色です。残念ながら丸ノ内線では撮影をさせてもらえませんでした。動かない電車で動いているように見せて撮るのであれば許可が下りたかもしれません。しかしぼくが、どうしても実際に走っている電車のなかで撮りたいと言って譲りませんでした。そこで仕方なく、開業前の試運転中だったりんかい線を借りて撮影したのです。
 これには反対意見があると思います。動かない電車であっても丸ノ内線の電車で撮るべきだったと。
 みなさんはどう思われるでしょう。
 観ていただいたあと、ぜひ意見を聞かせてください。
 ぼく自身は、徹と恵美子のかみ合わない関係、踏ん張っていないと壊れてしまいそうなそれぞれの思いが、走る電車、揺れる足下でよく表現できている……と、思っているのですが。自己満足かなあ……。

 それはさておき、この作品の助監督3名はたいへん優秀でした。ありがとう。

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コメント

先月からの筒井さんインタビュー掲載の雑誌6誌とシネマホリックのインタビューを見ることができました。これらのインタビューから渡辺監督と筒井さんの深い信頼関係がひしひしと伝わってきて「ブレス・レス」22日の公開がますます楽しみになってきました。(整理券が貰えるかどうかが最大の心配事ですが)
脚本への共感、主人公への理解が筒井さんのインタビューにあふれていて、作品に携わった皆様の暖かさも感じました。
ある方の日記(「ブレス・レス」の感想)に渡辺監督は詩人に違いないと書かれているのを読んで、映画の中のセリフにそう思える部分がふんだんに盛り込まれているんでしょうね、と思いました。
牧水と言うと小学生の頃から特に大好きな詩があります。
「白玉の歯にしみとほる秋の夜の酒は静かに飲むべかりけれ」(そのせいではありませんが私も毎晩静かに飲んでます)
「幾山河越え去りゆかば淋しさのはてなん国ぞ今日も旅行ゆく」(国語の先生が歌ってくれて感動しました)

「ブレス・レス」が全国公開されてひとりでも多くの方が見れますように願っています。

投稿: かぐや姫 | 2006年4月11日 (火) 20時41分

訂正と追加です。
先ほどの牧水の詩で「旅ゆく」の前の行がよけいでした。
もうひとつ大好きな歌を書き忘れました。
「白鳥はかなしからずや 空の青、海の青にも染まずただよふ」です。
この歌を私が今でも歌えるのは国語の先生が授業の中で何回も歌ってくれたからだということを思い出しました。先生もきっと若山牧水が大好きだったんでしょうね。

投稿: かぐや姫 | 2006年4月11日 (火) 21時19分

 かぐや姫さん、コメントありがとうございました。
 あなたはすばらしい国語の先生と出会いましたね。若山牧水を紹介できる先生なんて、なんとすばらしいことでしょう。

 白鳥は哀しからずや空の青海のあをにも染まずただよふ

 牧水の処女歌集「海の声」の歌ですね。
 白と青の対比が鮮やかな歌ですね。空の青、海の青に染まらずに漂っている白鳥に孤高の歌人の面影を見る思いがします。

 白玉の歯にしみとほる秋の夜の酒はしずかに飲むべかりけれ

 歌集「路上」の歌ですね。
 このころの牧水は恋人との関係が思うように行かず、酒におぼれ、東京から逃げ出し、信州小諸の田村病院に長期滞在していたのですね。だから「酒はしずかに飲むべかりけれ」に込められた牧水の思いはいくばかりだったのでしょう。

 幾山河(いくやまかわ)越えさり行かば寂しさの終てなむ国ぞ今日も旅ゆく

 これも「海の声」に収められた歌ですね。
 寂しさのない国なんかないだろう、だけど未知の世界へ旅に出ようという牧水の若さがとても初々しくていい歌ですね。
 カール・ブッセの「山のあなたの空遠く、幸すむと人のいふ」に通じるものを感じます。


投稿: 渡辺寿 | 2006年4月12日 (水) 01時53分

渡辺監督様 こちらこそコメントありがとうございます。
カールブッセの「山のあなたの空遠く・・・」(上田敏訳)も国語の教科書に出てて大好きな詩です。子供の頃暗唱した詩は何十年経っても忘れないものですね。この詩の解釈ですが、『とかく忘れがちな日常の小さな幸せを忘れてはいけない。不満ばかり言わないで感謝の心を持ちなさい』と言われているようにも感じます。

投稿: かぐや姫 | 2006年4月12日 (水) 06時28分

 かぐや姫さん、
 確か牧水がカール・ブッセについて書いた書簡があったと思い、朝から探しているのですが見つかりません。
「山のあなたの空遠く……」は我々にとって永遠のテーマであるという趣旨を述べていたと記憶しているのですが。
 見つけて、また書きますね。

投稿: 渡辺寿 | 2006年4月12日 (水) 11時13分

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