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2006年2月26日 (日)

みづからを新しく

  

  眼をあげよもの思ふなかれ秋ぞ立つ
  いざみづからを新しくせよ         牧水

 第5歌集『死か藝術か』(大正元年刊行)の一首です。
 5年に及ぶ小枝子との苦しい恋にようやく終止符が打たれ、心身と生活を新しくしようと努力していたころの歌です。ただ心も身体もそうそう単純にはできていない。新しくしようと決意しながらも、意識は過去に執着してしまう。
 歌人・伊藤一彦氏はつぎのように書かれています。

 では、このころの牧水は自己を新しくしつつあったかというと、そうではなかった。眼を閉じて過去へのもの思いにふけり、古い自分をなかなか脱しきれないでいた。そんな苦悩の中だからこそ歌われた一首であることに注目しておく必要がある。
               伊藤一彦著『あくがれゆく牧水』鉱脈社刊より

 偉大な歌人も、思うようにいかない自己と必死に格闘していたのでしょう。
 同じころの歌をもう一首。

  手を切れ、双脚(もろあし)を切れ、
  野のつちに投げ棄てておけ、秋と親しまむ

「手を切れ、双脚を切れ」から「秋と親しまむ」への飛躍がすごい。苛立つ感情を一瞬に浄化してしまう思考のダイナミズムが堪らない魅力です。

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コメント

つくづく、寿さんはいい人に出会ったのだなと思う。
また、こういう歌のすごさを直に受けとめられる人というのも、あまりいないと思う。
こうやって牧水を教えられると、白蓮を知ったとき以来の感動を覚えて、身震いする。

投稿: なななかば | 2006年2月26日 (日) 11時21分

 なななかばさん、ありがとうございます。
 映画の完成、首を長くして待っていますよ。
 柳原白蓮、いま林真理子著『白蓮れんれん』を読んでいるところです。

投稿: 渡辺寿 | 2006年2月26日 (日) 16時30分

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